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国内のスキー人口は減っているが、
外国人スキーヤーは増えている。
なぜ?
毎日降り続く日本の新雪が貴重だから。
夜間に降り続く雪で
先行者の滑り跡(トラック)は
翌日にはリセットされているから。
ノートラックのパウダースノーを求めて
世界中からスキーヤーが
北海道や長野県の白馬地区等に
集まっている。
- ゲレンデのパウダーは取り合い
普通のスキー場は
雪上車がコース整備を行い、
滑走しやすい雪面にしている。雪上車が圧雪した雪面の方が滑りやすい。
しかし、中には
非圧雪(新雪の状態)の雪面を残す
スキー場がある。パウダーを求めるスキーヤー、スノーボーダーが
集まるから。彼らはリピーターとなる。このようなスキー場で
ノートラックパウダーを滑ろうとすれば…早朝からリフトの順番を待たなければならない。
そして、
あっという間に新雪は食い尽くされる。そこでパウダーを求める人は
スキー場の外を目指すことになる。 - スキー場の外の世界
スキー場の外へ出て、自然な冬山を滑るのが、
バックカントリーツアーだ。パウダーは豊富だが…
自然の地形を滑る技術と
冬山登山と同じ経験、判断が必要になる。雪崩に備えた装備(ビーコン、プローブ、スコップ)、
冬山装備、ガイド同行、登山届は必須となる。
ガイドは雪崩情報に精通していなければならない。
バックカントリーで滑るには、
登り(ハイクアップ)がセットとなる。スキーの場合、
かかとが上がり、歩行できるビンディングを取り付け
板には後滑りしないシールを装着して
一歩ずつ板を滑らせながら登る。雄大な景色を眺め
風音以外は全くの静寂の中を登ると…自然の中で
本来備わっていた感覚が起動する。
太古には自分の身を守っていた直観力が。日常で思い悩んでいた些末な事、心配、不満等への
関心はなくなっている。滑走地点(ドロップポイント)に到達すると
シールを剥がしてザックに収納して
ビンディングを滑走モードにしてスタートする。
自然の地形、雪面の状況、
これから目指すルートを確認する。木々を抜け、谷を間違えないように、
雪庇やクレパス、スノーブリッジに注意して
安全第一の滑走となる。バックカントリースキーは
登りも滑りもリスクマネージメントも
全部セットで楽しむ冬山登山だ。スキーを着ければ
冬山の移動能力が格段に向上する。バックカントリーツアーでも
滑りに特化した世界がある。その一つが雪上車でハイクアップする
CAT(雪上車)スキーだ。 - CAT(雪上車)スキー
ハイクアップを雪上車で行うことで
長い距離を滑走できる。通常のバックカントリースキーでは
経験できない世界がある。今年も参加した
TENGU CAT-SKI GUIDES について
書いてみる。TENGU CAT-SKI GUIDES は
今年で7年目を迎えるCATスキーツアー。北海道旭川から車で2時間程にある
北大雪エリアで運営されている。ツアー参加のゲスト以外は
当エリアには踏み入れないので、
ノートラックパウダーをゲストだけが
独占する。他のエリアのツアーでみられる、
喧噪、競争、節度無いスキーヤー、
ボーダーから隔離され
ノートラックパウダーを滑ることができる。外国の団体ツアーはお断りして
鎖国を貫いているという。ノートラックパウダーを奪い合うストレスから解放され、
純粋にパウダーを楽しめる状況になると
大自然から無垢なエネルギーが入ってくる。自分達しかいないエリア。
無心で滑り振り返ると、
自分達のトラックだけが記されている。
そんな空間だ。さらに、今回のツアーでは、
CATスキーならではの貴重な体験も出来た。 - 体感-30℃の世界
今回のツアーで、低気圧の通過に伴い
ストームの中を滑る機会があった。雪上車でなければ
気温-17℃、瞬間風速15m。
体感温度-30℃の世界には行けない。そこでは
防寒ウェアを着ていても
長く居られない状況だった。雪上車を降りて、板を装着して、
強い北西風を避けるドロップポイントまで
トラバースする。普通なら時間がかからない板の装着も
低温・強風でうまくできない。
思考もうまく回らない。なんとか
森の中のドロップポイントに移動すると
風の勢いは少し治まる。森の中のツリーラン(木の間を滑る)では
バディ(ペア)を組み滑走の順番を待つ。その間も
手足を動かしていないと
寒さで痺れ、感覚がなくなってくる。しかし、森の中の雪は、深いけど、
細かく、軽く、柔らかく、スムースだった。森の中にひっそりとたたずむパウダーを
1人で滑り降りている瞬間は静かな浮遊感
音もなく、時間が止まっている気がした。 - 非日常では人は素直になる
今回のツアーは男性5名、女性1名、
リードガイド1名、テールガイド2名という
メンバーであった。日常から、全く隔離されている状態なので、
いつも出てくる自意識が出にくい。自然の驚異の中ではお互いに運命共同体。
メンバー同志は相手を気遣い、
我先に、オレオレ、関係ない、という
心の動きにはならない。最初に滑る順番となっても
どうぞ、どうぞ、と互いに譲り合う場面も出る。ストームの翌日は視界が広がった。
雪面がリセットされて
ノートラックの極上パウダーが待っていた。 - 静かな浮遊感
雪質は毎日変わる。
同じパウダーでも、降っている最中の雪と
積もってから冷え込んで、
湿度が下がった(ドライアウト)雪では
異なる。この日の雪は適度にしまった、
蹴ると板が戻ってくるピーナッツクリーム感覚の
パウダーだった。まっすぐ降りるだけではもったいない。
ターンの感覚を楽しんだ。後ろから陽が射すと
自分の影と一緒に滑る。
不思議な感覚。この浮遊感をなんと例えれば良いのか?
静かで柔らかく、それなりのスピードで
雪面を移動し、地上を俯瞰する感覚。サーフィンでぐいぐい波に運ばれるのとは違う。
静かな移動感。 - 非日常から日常へ
3日のツアーが終わり、旭川空港へ戻る。
日常に戻る。非日常で得た感覚
自己中心の小さな考え、悩み、不安、不満を忘れ、
周囲の自然やメンバーだけに、関心を向ける。少し地上から浮き上がって俯瞰する浮遊感覚。
スムースで滑らかな感覚。非日常の世界で終わらしてしまうのは勿体ない。
日常でも、
我先に、オレオレ、関係ない 自意識過剰に
なりがちな自分の心をスイッチを変えて、周囲の環境、状況、人に向けて
静かに俯瞰できる感覚を大切にしたい。あの静かな浮遊感を思い出せば
その感覚にアクセス出来ると思う。ここまでお読み頂きありがとうございました。
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